抗原特異的なB細胞の分化成熟過程を解析する目的で、TNP基特異的B細胞クロ-ンを樹立した。TNPーLPSであらかじめ免疫したA/Jマウスの脾細胞を抗Thy1.2と補体で処置して得られたB細胞と、HAT選択培地感受性を示すB細胞変異株2.52Mとの間で細胞融合を施行した。増殖してきたハイブリド-マを、TNP-SRBCを用いたロゼット形成によりスクリ-ニングして、限界稀釈法によりクロ-ニングした。この方法によって樹立したTP67.14は、細胞表面にIgM、B220、IA^K、IE^Kなどを有し、かつ細胞膜上にTNP基受容体を有する抗原特異的B細胞クロ-ンであることが確認された。興味あることにこの細胞は、マイト-ゲンであるLPSのみならずTNP-BSAやTNP-KLHなどのTNP化抗原の存在で、有意に抗TNP-PFCへ分化し、この反応にはT細胞のヘルプを必要としなかった。この現象により、B細胞表面の抗原受容体と抗原との直接的な結合がB細胞に何らかの分化成熟のシグナルを発揮することが明らかになった。次いで我々はB細胞表面上に存在するMHCクラスII抗原が、B細胞自身の分化増殖過程に如何なる関与を有するかを明らかにするため下記の実験を行なった。アフィニティクロマトグラフィ-にて分離精製したモノクロナル抗IA^Kや抗IE^KをTNP-BSAと同時に加えて刺激培養すると、TP67.14は抗IA^dや抗Hー2^Kを加えた場合に比し有意に抗TNP-PFCへ分化成熟した。更にTNP基を直接抗IA^Kや抗IE^Kに結合させた結合物で同様に細胞を処置した場合、TNP-抗IA^dやTNPー抗MGGに比し、著明に抗TNP-PFCへ分化した。以上の実験結果は、特異抗原により誘導されるB細胞の分化成熟過程には、細胞表面上のMHCクラスII抗原が直接的な関与を有していることを強く示唆しており、B細胞の分化機構を知るための有力な情報を提供している。
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