もし低周波騒音暴露でもC5dipが生ずるのであれば、これは音暴露が蝸牛基底膜の強制的振動を生じ、これが難聴の原因となるという仮説では騒音難聴の説明は不十分である。したがって騒音ストレスによる内耳の微小循環の障害がその原因と推察されるので、モルモット蝸牛のEndocochlear Potetial(EP)を使用し、騒音の反復暴露が蝸血のstria vascularisの動態におよぼす影響を追求した。 すなわち、1kHz、500Hzおよび250Hzの音暴露を100〜120dBで4時間、20時間、40時間および64時間にわたり実施し、次第にモルモット聴覚に低周波暴露でも4kHzおよび6kHzにdipが生ずること。7kHzのAPの閾値の上昇とMaximum output voltageの減少を認めた。強大騒音であればその臨界帯域を越えて高音部の神経性難聴の生ずる可能性について検討する。騒音はその周波数構成によって音響物理的に内耳に影響を与える面、本研究のごとく内耳の自律神経系に影響をおよぼし、蝸牛基礎回転の血流の減少を生じ、これがEPに変化を与えることから、騒音の周波数如何に関せず、音圧と暴露時間の長短によって聴覚に影響をおよぼすことを立証した。
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