過酸化脂質の研究に高速液体クロマトグラフィーの利用が有効であることが多くの分離例で示されている。生体内に多く存在するリン脂質についても逆相モードを用いることでリン脂質ヒドロペルオキシドを未酸化リン脂質から容易に分離することが可能とされている。生体膜成分であり重要な生理機能をもつホスファチジルコリンが実際に生体内で過酸化反応の標的因子になるか否かは興味ある点であり、この脂質成分の過酸化に環境汚染物質である重金属類が栄養因子と共にどのように関与するかを解析するため、肝臓、脳を材料としてホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミンを抽出し、オタタン結合シリカカラムを用いる逆相系でヒドロベルオキシドを分離し、電気化学検出器を用いて検出するための抽出条件、分離条件、検出条件の検討を行い、方法の確立を急いでいる。細胞の老化、ひいては個体の老化に脂質過酸化が重要な役割をはたしていると考えられ多くの知見があり、これらと種々の環境汚染物質の関係は興味ある点である。老化促進マウスはこの脂質の代謝異常が正常マウスに比して早期に出現する系である。このため老化機序を前記観点から解析するのに適した系の一つと考えられ、この系を導入し、実験に供する目的で繁殖させている。導入後約7ヶ月経過し、老化促進系(P1)は正常系(R1)に比較して報告されている如く、水晶体の白濁、眼囲皮膚の脱毛、炎症症状、起毛、運動能の低下など、老化指数の増大を示しており、早期に老化症状を呈している。現在繁殖は順調に経過しており、実験に用いることも近く可能となる。
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