本年度は、昨年に引き続き妊娠中ラットのMg摂取不足が仔ラットの心筋活動に及ぼす影響について検討を加えた。さらに異常の認められた仔ラットを正常食で飼育した場合の回復状態も検討した。 〔方法〕交配直後の雌ラットを5群に分け、Mg量の異なる5種類の飼料(基本食・Mg80%食・Mg50%食・Mg30%食・Mg0%食)を各群に与えて出産まで飼育した。出産後全群の母親ラットに基本食を与えて4週間授乳させた後、仔ラットの半数について実験を行い、残りの仔ラットはさらに基本食にて4週間飼育した後実験をおこなった。飼育後、心筋活動を検討するために主として心蔵重量・心筋の組織学的検討および心筋に対する電気生理学的実験を行った。〔結果〕体重:離乳直後の仔ラットでは妊娠期基本食群以外の群でいずれも体重減少が認められたが離乳後4週間基本食を与えると全群体重の回復が認められた。心臓重量:離乳直後並びにその後4週間基本食を与えた群で妊娠期基本食群以外の群において異常な心臓肥大が認められた。組織学的検討:離乳直後並びにその後4週間基本食を与えた群で、いずれも壊死などの組織学的に著しい変化は認められなかった。電気生理学的検討:離乳直後並びにその後4週間基本食を与えた群いずれも、妊娠期基本食群は刺激に対し規則正しく収縮反応するが、他の群では刺激に対する不規則な収縮反応および頻回の心室細動様パタ-ンを示した。〔考察〕以上の結果より、妊娠中の僅かなMg摂取不足でも胎児は欠乏の影響を著しく受けることが判明した。また、心筋障害の回復は遅く臨床的症状は無くても心筋負荷が加われば心筋活動の異常が突然出現する可能性があることも判明した。心筋活動の異常は、組織学的には懐死などの著しい変化は認められなかったが、心臓肥大が長期にわたって認められることより、心臓肥大と関連が深いと考えられる。
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