研究課題/領域番号 |
63570248
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研究機関 | 国立公害研究所 |
研究代表者 |
嵯峨井 勝 国立公害研究所, 環境生理部, 室長 (80124345)
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研究分担者 |
佐野 友春 国立公害研究所, 環境生理部, 研究員 (10178808)
市瀬 孝道 国立公害研究所, 環境生理部, 研究員 (50124334)
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キーワード | アスベスト / タバコ / ヒドロキシラジカル(・OH) / DNA鎖切断能 |
研究概要 |
アスベストによる環境汚染は私達の身近な問題であり、かつその発癌性のゆえに、現在大きな社会問題となっている。私達は先に、アスベストとタバコの煙から生じることが知られている過酸化水素(H_2O_2)とから生体成分との反応性の高いヒドロキシラジカル(・OH)が生じることを見いだした。このラジカルはDNAを著しく傷害することから、この・OH産生現象がアスベスト汚染下にある喫煙者の発癌率が非喫煙者の50倍も高いと言われる原因ではないかと考えた。 これを証明する為に今年度は、5種類のアスベストとH_2O_2あるいはタバコ煙との共存によって生じる・OHの発生量の比較と、この・OHによるDNA鎖切断能の違いについて調べた。 まず、スピントラップ剤のDMPOを用いて5種類のアスベストとH_2O_2存在下での・OHの生成を調べたところ、クロシドライト>アモサイト>アンソフィライト>クリソタイルB>クリソタイルAの順となり、この順番はDNA鎖切断能とも良く一致しており、両者の間には有意な相関(P【<】0.02)が認められた。一方、H_2O_2のかわりに、リン酸緩衝液(PB)にタバコの煙をバブリングしたSmoke-PBと5種類のアスベストとをインキュベーションするとESRによって調べた・OH産生の順序は5種のアスベストでH_2O_2の場合と同様であったが、DNA鎖切断能はどのアスベストでも予期に反して極めて低かった。また、Smoke-PB濃度をあげるとESRによる・OH量の変化はわずかであったが、DNA鎖切断は著しく低下した。 以上より、Smoke-PBとアスベストによる・OH産生能はH_2O_2との場合と同様であるが、DNA鎖切断能は著しく低下することが判明した。この原因はタバコの煙の濃縮液中に、・OHとの反応性がDMPOより低く、DNAとの反応性よりは高いか同等程度のポリフェノール類か何かが存在していることによると思われる。
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