軽症高血圧のコミュニティケアの評価の視点から健康審査受診者のライフスタイルを検討した。研究対象は富山県O市(農村地区、人口約4万人)における老人健康診断受診者である。この市の健診受診者は例年約7000人、受診率は約60%である。昭和63年度の受診者の過去5年間の受診状況をみると約半数は毎年受診しており、初回受診者は4.7%にすぎなかった。したがって、受診者は健診を活用するセルフケア実施群とみなすことができる。この受診群のライフスタイルを同年の健診非受診群のそれと比較した。非受診群の過去5年間の受診状況をみると、1度も受診してない者が約半数を占め、1〜2回受診者とあわせて全体の約70%であった。軽症高血圧の自然史にとって重要とされるライフスタイルを比較したところ、喫煙、カルシウム摂取状況(牛乳を指標食品としたもの)が非受診群より受診群で良好な状況にあった。また非受診群のなかでも、過去に1度は受診したことのある者の方が1度も受診したことのない者に比較してライフスタイルが良好であった。一方、飲酒や食塩摂取では、受診群がより良好な状況にあるという証拠は得られなかった。 なお、今回の研究はほとんどの高血圧者に受けいれられているものと推測された。しかし、高血圧者の頻度を受診群と非受診群で比較すると、前者で約10%、後者で約20%と2倍位の差異がみられた。また非受診群のなかでも過去に1度も健診を受診していない者ではさらにその頻度が高かった。 以上、軽症高血圧が主体であるコミュニティにおける高血圧ケアでは、健診受診群の良好なライフスタイルへの行動変容がおきていることを確認した。最終年度は本研究で構築した受診者のレコ-ドリンケ-ジにもとづいて死亡リスクの減少に関する効用を数量的に算出する。
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