女性の飲酒行動は年令ならびにその時々に体験するライフイベントと密接な関係にあることから、ライフイベントの経験の有無、経験年令、および飲酒行動の変化が、現在の飲酒行動とどのような関係にあるか検討した。今回の解析には、赤池の情報量基準(AIC)を用いたが、AIC解析の利点は、説明変数間で情報量の多寡を相互に比較でき、しかもn個の説明変数について(n+1)次元までの変数の組み合わせの中から最も情報量の多い(AICの小さい)組合わせを得ることができる点である。また、カテゴリカルな説明変数のカテゴリ-区分の最適化も行うことができることにある。 AIC解析の結果、末子出生、父親の死、夫との離・死別・就転、結婚など13のライフイベントが現在飲酒量(QFI)と非独立であった。また、カテゴリ-区分の結果から、夫との離・死別、長子の高校卒業、父親の死などは、その時に増えたか否かの2区分で情報量が増え、家庭の不和や子供の死などは、そのイベントを体験したか否かの2区分で情報量が多くなることが認められた。 しかし、末子出生、母親との死別年令、父親との死別年令、結婚、末子の高校卒業などは年令と組み合わせた場合に情報量が増え、これらのイベントは年令の影響が大きく、このような影響を除くために、年令群別にAIC解析を行った。その結果、30才代では末子出生、就職、進学など育児と社会進出に関するイベントの情報量が多く、40才以上では、親の死や子供の高校卒業などで、身近な人との死別や育児の終了に関係したイベントの情報量が多くなり、60才代ではQFIに対して非独立なライフイベントは認められなかった。 現在、QFIの分布とこれらのライフイベントの関係から、女性飲酒の促進要因、抑制要因について定量的な検討を重ねている。
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