1.研究目的:手指血圧を指標とした末梢循環機能検査法と、体性感覚誘発電位を指標とした客観的知覚機能検査法を組み合わせた、振動障害の新しい診断法を確立することである。当該年度は特に冷水負荷試験における手指血圧変動の解析と痛点電気刺激による体性感覚誘発電位の測定方法の確立をおこなった。 2.研究方法:振動障害者でレイノ-症状を有する5名とレイノ-症状を有しない4名について測定した。左右10指における血圧、皮膚温、爪圧迫テスト値、光電容積脈波値を解析した。また、振動障害者でレイノ-症状を有する3名とレイノ-症状を有しない3名について測定した、冷水負荷中の手指血圧、皮膚温、爪圧迫テスト値、光電容積脈波値を解析した。同時に20点を刺激できる装置を作成し、3人の健常者について体性感覚誘発電位を測定した。 3.結果の概要:手指血圧値は、循環機能の指標である皮膚温、爪圧迫値、光電容積脈波値と高い相関を示した。レイノ-症状を有する振動障害者と同症状を有しない振動障害者の比較では、安静時においては手指血圧値に差は認められなかったが、冷水負荷検査では両者間に明らかな差が認められた。冷水負荷試験における手指血圧の診断意義について、健常対照者を含むより多数例について検討し、既存の末梢循環機能検査と比較する必要がある。痛点刺激による体性感覚誘発電位の測定に関しては、皮膚上の1点刺激を検討したが明瞭な脳波変動を検出できなかった。そこで、20点を同時刺激できる部品を作成した。同装置を用いて、刺激点数、刺激電流の大きさと検出される誘発電位の頂点潜時および電圧を健常者について検討した結果、8点あるいは16点刺激であれば、痛覚閾値より1ー2mA高い電流で有効な誘発電位を検出できることが明らかになった。
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