1 研究目的:近年北欧で開発された手指血圧を指標とした末梢循環機能検査法と、我々が従来検討してきた体性感覚誘発電位を指標とした客観的知覚機能検査法を組みあわせた、振動障害の新しい検査法の診断意義を明らかにすることである。このさい、手指血圧測定時の冷却負荷方法を改良するとともに、知覚受容器の機能を直接検査するための痛点電気刺激法を新しく検討し従来の機械的刺激による誘発電位の測定方法と比較した。 2 研究方法:振動障害患者8名を対象とし、左右の上腕血圧および左右10指の手指血圧を測定した。このうち6名について1側手を手関節まで10℃の冷水に10分間浸漬し手指血圧の変動を測定した。また、健康男性5名を対象とし、球状銀電極を右手背側の皮膚痛点上に固定し電気刺激を与え、球状銀電極20個を5mm間隔でゴム板に格子状に固定した刺激電極を作成し、手背部皮膚上に固定して多点同時電気刺激を行なった。 3 成績の概要:手指血圧は従来より末梢機能検査として用いられてきた手指皮膚温、爪圧迫テスト、指尖容積脈波の測定値と良い相関をしめし、末梢循環機能検査として有用であることが確認された。また、振動障害者でレイノ-症状を有する群と有しない群の差は、常温下では明確でなく、冷水浸漬中あるいは冷水浸漬後に認められ、従来の末梢機能検査よりもその差は強い傾向にあった。このことは、振動障害検診において冷水浸漬検査に手指血圧の測定を加えることの有用性を示している。任意の皮膚表面上で多点を同時に刺激することにより、より安定した誘発電位を導出することができた。その頂点潜時や誘発電位の振幅が痛点電気刺激によるものとほぼ同じで、正中神経電気刺激によるものとは異なることから、末梢受容器を介した誘発電位を測定できているものと判断され、多点刺激による電気刺激法の有用性が確認された。
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