研究概要 |
某大学医学部1外科・2外科.及びその関連施設で、昭和20年〜昭和45年の間に胃・十二指腸良性疾患のために手術・輸血を受けた患者4,289例の診療録を閲覧した。その診療録から氏名、性、生年月日、現住所、本籍地、原疾患、手術術式、手術年月日、輸血量、飲酒歴、喫煙歴等の情報について採録した。これらの症例の個人識別情報、現住所、本籍地等の情報を用い、当該役所に住民票・戸籍抄本等を照合して生死を確認した。さらに死亡例については死亡診断書を入手した。次に原因別観察死亡数を集計し、一般人口の原因別死亡率を研究対象集団の人口に掛け合わせて期待死亡数を求め、標準化死亡比(観察死亡数と期待死亡数の比)を計算し、リスクの高まりの有無を検討した。未だフォロ-アップが完了しないので、ここに予備的結果を示す。 まず肝がん死亡(男)は胃切除の際に輸血を受けた群に高く、そのリスクは輸血量(ユニット数)に比例して高まっていた。これは輸血を介して感染したHCV関連の肝がんが発生したものであることが示唆された。なお輸血から肝がん死亡までの期間は平均21年であった。ところで、北欧諸国では残胃初発がんのリスクがBーII法に高く、そのリスクは術後期間に比例して高まることが報告されているが、私どもの研究ではそのような傾向を見いだしえなかった。 今後は現在急速に進歩しつつあるHCV関連マ-カ-を用いて、C型肝炎から肝硬変・肝がんの自然史の研究、肝がんの早期発見・早期治療などが重要な研究テ-マとなろう。現在、本研究の展開としてC型肝炎と肝硬変・肝がんとの関連についての疫学的研究を行っている。
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