| 研究概要 |
本研究においては、HBVキャリアの病態を主に末梢血リンパ球サブセットとの面から分析し、キャリアの病態を把握するマ-カ-としての可能性について検討した。その結果、HBVキャリアは健常人に比して、suppressor T(Ts),suppression inducer T(Tsi)が高値、helper T(Th),cytotoxic T(Tc)が低値を示した。この結果は、HBVキャリアが相対的にimmunosuppressiveな傾向を有していることを示したものと考えられ、長期にわたる大量のHBVの持続感染を可能たらしめた宿主の免疫状態として妥当なものと思われる。次に、HBVキャリアをフォロ-していた中で、ナチュラルシュ-ブによってHBe抗原陰性化をきたした例において、シュ-ブ前のTcの上昇、Tsの低下が観察された。また抗ウイルス療法としてインタ-フェロンを投与した例において、治療有効群は治療無効群に比して、治療前、治療中共Tcが高値を示した。これらの結果は、末梢血リンパ球サブセットの経時的観察がHBVキャリアの病態の変化を宿主の免疫状態から知る良いマ-カ-と成り得ること、及び抗ウイルス療法有効例の選択の一助となる可能性を示したものと考えられる。
今後、リンパ球表面抗原の差に基ずくリンパ球亜群の分類が、各々のリンパ球機能とより良く一致するようになれば、宿主の免疫反応が深く関与するHBVキャリアの病態の把握、キャリアの管理、治療等に際して、末梢血リンパサブセットが、簡便で非侵襲的な有用なマ-カ-の一つになることが期待される。
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