本年度は脳の加齢変化について特に痴呆群と非痴呆群における老人斑の出現様態を中心に検討を行い、併せて神経原線維変化、アミロイド・アンギオパチー、リポフスチンについても検索した。検査対照は当教室保存法医剖検脳を用い海馬回、後頭葉先端部(視覚中枢)の組織切片を作製し、銀染色であるBielschowsky平野染色を施した。痴呆の判定はアンケート形式で生活状況調査表を配布し、その回答から判定した。 本年度は50歳未満16例、50歳以上41例の検討を終え、原始老人斑(SPP)は50歳以上のうち10例(70歳以上で8例)に認められ、老人斑(SPC)は70歳以上12例のうち7例に認められた。神経原線維変化(NFT)は70歳以上の12例のうち3例に、アミロイド・アンギオパチー(AA)は80歳以上3例のうち2例に認められた。リポフスチンの沈着は50歳以上41例中5例に認められた。 痴呆の判定を生活状況調査表より行った結果、行動異常の有無、現病歴から4例が痴呆と判定された。これら痴呆例は全て70歳以上であったので70歳以上で痴呆のないもの8例を非痴呆群とし前記痴呆群と比較検討した。 痴呆群、非痴呆群におけるSPCとSPPの1視野中の平均個数、占有面積の割合、SPC及びSPP1個当りの平均面積、出現パターンをそれぞれ海馬回、後頭葉先端部において比較検討し、併せてNFT、AAの1視野中の数、リポフスチンの出現の有無について検討した。その結果、痴呆群において海馬回のSPCおよびSPPの1個の平均面積、両者の1視野中に占める面積の割合が非痴呆群に比し有意に増加していた。また、後頭葉ではSPPの1視野中の平均個数、SPC及びSPPの視野に占める面積の割合が非痴呆群に比し有意に増加してきた。 次年度は年齢と加齢所見との相関について検討を行う。
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