A型とB型の両活性カラムを交互に使用し、かつ、これを連続して3回続けるアフィニティ精製によって、O型ヒト血清からA型とB型の血球をともに凝集する交叉反応性抗AB抗体を分離精製してその性状について検討を加えた。精製画分はA型とB型の血球を等しく凝集し、2-メルカプトエタノ-ルはこの活性を減弱させない。精製画分は電気泳動的に均一で、寒天ゲル内で抗ヒトIgG抗体との間に明瞭な沈降線を形成した。A型とB型の分秘型唾液、A型とB型の胃粘膜由来血液型物質、A型とB型の合成血液型決定基三糖・アルブミン結合物によるこの抗体に対する凝集阻止試験において、これら型的活性物質のすべてが、それぞれの血液型と、同型の血球に対する凝集を阻止するのみで、型の異なる血球への凝集活性は阻止しない。同様の成績は合成A型決定基三糖そのものによっても得られた。また、この抗体はA型とB型の合成三糖を固定した免疫吸着体のいずれにも完全に吸着され、解離溶出液ははじめと同様の凝集活性を示した。パパイン消化によって得たこの抗体のFab分節は、A型とB型のいずれの活性カラムにも吸着され、これからの解離溶出液について抗Fab抗体を仲立ちとする間接凝集反応を行った結果、Fab分節が、O型を除いてA、B、AB型のいずれの血球にも結合することを確認した。 以上の成績は、O型ヒト血清に存在するA型、B型の両血球を凝集する交叉反応性抗AB抗体と呼ばれるものは、O型を除く血球に共通して存在する抗原や、A型とB型の抗原間の類似部分を認識する抗体というよりも、むしろ、多重機能性あるいは多重特異性をもつ抗体であることを示唆するものである。また、この抗体はIgG抗体である。 ABO式血液型における変異型血球とこの抗体との反応性に関する検討は今後の問題として残された。
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