A型、B型およびAB型の赤血球から膜を調整し、溶媒抽出により糖脂質を分画した。薄層クロマトグラフィーを行った後のオルシン-硫酸法による総糖脂質の染色では陽性バンド10数個が認められたが、血液型の違いによるR+の差はなかった。薄層プレート上で抗Aおよび抗bモノクローナル抗体を用いてImmunostainingを行うとA型糖脂質については5〜6個の、B型については6個の陽性バンドが検出された。これらのバンドについてELISAと解離試験を行ない、4種のA型糖脂質と6種のB型糖脂質を確認した。TLCプレート上でのImmunostainingは偽陽性反応が出やすいという欠点はあるが、微量の糖質抗原を精製せず、しかも複数の抗原を一挙に検出できるという点で優れた方法といえる。 また型活性を有するかどうかの確認で用いたELISAについては、糖脂質のプレートウェルへの固相化が必須条件であるが、糖脂質が水に溶けないため有機溶媒を使う必要がある。いくつか検討した結果、メタノールを用いるとプレートの溶解変性がなく、さらに糖脂質の剥離もなく良好な成績を得た。ただし糖脂質をメタノールに溶解して各ウェルに入れた後は完全にメタノールを揮発させる必要がある。 型活性を有する糖脂質の分布についてはImmunostaining後にクロマトスキャナーを用いて染色強度から算出した。その結果、A型およびB型糖脂質ともに、薄層上速い移動度を示す直鎖状の短い糖質を有する型物質がより高い比率を示した。枝分かれれ構造を持つ長い糖鎖を有する糖脂質は、その複雑さとともに比率が低下した。A型活性糖脂質の比率について、A型およびAB型の間で比較すると、差はなくほぼ同じ比率を示した。一方、B型糖脂質については、B型とAB型の間にほとんど差はなく同様な分布を示すことが判明した。
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