法医学走域をはじめ広い分野でエタノールの定量に用いられているガスクロマトグラフィーによる気化平衡法について、基礎的な検討を加え以下の結果を得た。 1.気化温度を0℃から60℃まで上げると、気相中のエタノール濃度は指数関数的に増加した。しかし、内部標準物質として、しばしば用いられるnープノールに対するエタノールの比は、気化温度の上昇とともに低下した。 2.一定量のエタノール溶液(1mg/mlの濃度のエタノール溶液0.1ml)では、気化総量(単位容積当りの気相のエタノール量と気相容積の積)ば気化容積が大きくなれば(14ー640mlの範囲)増大した。したがって、気化効率は、気化容積が大きいほど大である。 3.単位試料重量当りの気化量は試料量が少ないほど大であり、気化瓶の底を完全に被う程度の量では、ほぼ一定となった。 以上の結果から、1滴の試料からでもエタノール濃度の定量が可能であることが明らかとなり、この定量法を「一滴法」(One-drop-method)と名付けた。その手順は以下の通りである。 1.気化瓶を秤量する。 2.気化瓶に1滴の試料をとり、ふたたび秤量し、試料重量を求める。 3.一定温度(55℃)、一定時間(10分間)水浴中で加温する。 4.気相1mlをガスクロマトグラフィーへ注入する。 5.試料1ml中のピーク面積を算出する。 6.既知エタノール溶液から得た検量線を用いて、試料重量当りの濃度を求める。
|