慶應義塾大学法医学教室における司法解剖例約6000体のうち本研究の目的に適した500例の死体現象所見を収集整理した。 死斑の発現の強いものを6、極めて弱いものを1、発現のないものを0として、発現程度を数値化した。同様に硬直も0〜6、瞳孔混濁度0〜6などとしてそれぞれの発現程度を数値化して表した。 (1)さらに条件に適したサンプル111例のこれら死体現象値について、変数増減法を用いた重回帰分析により死後経過時間を求める一次回帰を行なった。 Y=A_1X_1+A_2X_2+……+C すなわちY:死後経過時間、A_n:偏回帰係数、X_n:説明変数である。X_1:性別(男0・女2)、X_2:直腸温(単位℃)、X_3:角膜混濁度として計算したところ、A_1:2.103、A_2:-0.374、A_3:2.202であり、寄与率R^2は0.582であった。 (2)寄与率を高めるために、はずれ値を除外した105サンプルについて、性別・直腸温・カテゴリ-(死斑退色)・カテゴリ-(角膜混濁)を用いて計算したところ、R^2は0.672となった。 (3)なお実際例に適用しやすい項目として、性別・直腸温・角膜混濁度・死斑退色度について検討し計算したところ、R^2は0.637であり実用に堪え得ると思われる。 (4)(報告書においてそれぞれの偏回帰係数、標準回帰係数、標準誤差、t値などを図表で示す)。
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