基礎的研究:(1)活性酸素を刺激するロイコトリエンD_4(LTD_4)は腎糸球体のメサンジウム細胞を収縮させ腎血流量や糸球体ろ過率を低下させる。これに対し、心房性利尿ホルモン(ANF)は、同じメサンジウム細胞を弛緩させて腎血流量や糸球体ろ過率を保つ。LTD_4とANFはこのような機序をかいしてともに虚血性急性腎不全の因子として重要であり両者の関連についてラットの糸球体を単離して検討した。ANFはcGMP second messengerとしてメサンジウム細胞を弛緩すると考えられているのでcGMP産生量について両者の効果を検討した。ANFは糸球体のcGMP産生量を用量依存性に増加させたが、LTD_4はcGMP産生量に変化を与えなかった。ANFとLTD_4を一緒にするとLTD_4によりANFによるcGMP産生量が低下した。これらのことより、LTD_4による腎機能障害は、cGMP産生抑制による機能障害の可能性が考えられた。(2)腎糸球体のボーマン嚢より直接ろ過液を採取してその活性酸素を測定する方法については、現在微量蛍光光度系を開発中である。現在の精度でも大量のろ液を使用すれば測定可能であるが、(100pmolで20mVのピーク)、連続測定するにはまだ不充分であり、光源をキセノンランプに変更し精度の向上を検討中である。 臨床的研究:血中のLTD_4や活性酸素の測定は現在不可能な状態である。そこで活性酸素を刺激する可能性の考えられる甲状腺機能と急性腎不全について検討した。37例において、急性腎不全から回復した群と死亡した群にわけて比較したところ、死亡率において甲状腺機能の低下が高度であった。この関連の意味づけは、はっきりしないが、活性酸素が高度に出ている群では、活性酸素を増加させないように甲状腺機能が抑制を受けている可能性が考えられる。
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