基礎的研究:(1)活性酸素を刺激するロイコトリエンD_4(LTD_4)は腎糸球体のメサンギウム細胞を収縮させ腎血流量や糸球体3過率を低下させる。これに対し心房性利尿ホルモン(ANF)は同じメサンギウム細胞を弛緩させて腎血流量や糸球体3過率を保つ、LTD_4とANFはこのような機序をかいして虚血性急性腎不全の因子として重要であり両者の関係について検討した。ANFはcGMPを用量依存性にラット糸球体において増加させたが、LTD_4存在下ではcGMP産生量が低下した。従ってLTD_4による腎機能障害はcGMP産抑の抑制をかいしている可能性が考えられる。(2)腎糸球体のボ-マン嚢より直接3過液を採取して活性酸素を測定することに関しては十分な感度が得られず現在検討中である。(3)活性酸素による血管内皮障害により分泌される可能性のある物質としてエンドセリンがある。この物質は協力な血管収縮性物質であり虚血性急性腎不全に重要な役害をしている可能性があるので腎作用について検討した。種々のペプチドによるcAMP産生に対するエンドセリンの効果を検討したところ集合尿細管においてAVPに対するcAMP産生量を抑制することがわかった。これにより虚血性腎不全時には、AVP作用を抑制することによりエンドセリンが利尿的に作用している可能性が考えられる。 臨床的研究:(1)活性酸素を刺激する可能性のある甲状腺ホルモンと急性腎不全について検討した。急性腎不全例で回復した群と死亡した群に分けると死亡群において甲状腺機能がより低下していた。死亡群では、甲状腺ホルモンが低下した活性酸素を増さないようにしている可能性が考えられる。(2)急性腎不全時に活性酸素などにより分泌される可能性のあるエンドセリンについて検討した。急性期では血中エンドセリンは明らかに上昇し、経過とともに低下を示した。両者間に何らかの関係があるものと推定された。
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