糸球体基底膜(GBM)における高分子蛋白の透過性について、主としてヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)よりなる荷電障壁の重要性が報告されている。従来、これら荷電障壁を形成する陰荷電物質を染色する目的で、各種陽荷電プローベが使用されているが、これらを定量化することは困難であり、さらに電顕にて観察されたこれらの形態は、HSPGの分子構造形態とは著しく矛盾すると指摘されていた。最近、我々はCoprolinic blueという銅を含む色素を用いて、まずGBM陰荷電物質をその分子構造形態に近い形で捉え、さらに定量的評価として、この色素中に銅が含まれることに着目し、GBM陰荷電物質に結合した銅を原子吸光分析装置にて測定し、陰荷電性の定量的指標化を行うことに成功した。この方法にてラットのアミノヌクレオシド誘発ネフローゼモデルにおけるGBM陰荷電物質の変化を検討した。即ち、本色素を臨界電解質濃度法に従って左腎を灌流し、一部を一般電顕観察用に試料を作成した。他方、GBMを単離し、GBM結合銅量を原子吸光分析装置にて測定し、単位蛋白量あたりで示した。正常対照群では、GBM内外透明層に足突起直下よりGBM緻密層に垂直に伸展する長さ約30〜40nmの線維状構造が認められた。実験群では、極期に多量の蛋白尿が出現し、上記線維状構造が減少し、その配列も不規則となっていた。GBM結合銅量(μg/mg蛋白)も対照群7.9±0.43に比し、3.7±0.33と有意に減少していた。以上のごとく、本法により陰荷電障壁の定量化に成功し、さらにアミノヌクレオシド誘発ネフローゼモデルにおける蛋白尿の成因の一つにGBM陰荷電障壁の減少が関与することを示した。
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