糸球体基底膜(GBM)における高分子蛋白の透過性について、主としてヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)よりなる荷電障壁の重要性が報告されている。前回、申請者らCuprolinic blueという銅を含む色素を用いて、GBM陰荷電物質を、その分子構造形態に近い形で捉え、さらに定量的評価としてこの色素中に銅が含まれることに着目し、GBM陰荷電物質に結合した銅を原子吸光分析装置にて測定し、陰荷電性の定量的指標化することに成功した。さらに、この方法によってラットのアミノヌクレオシド誘発ネフロ-ゼモデルにおいてGBM結合銅量は、対照に比し有意に減少し、本症における蛋白尿の成因の一つにGBM陰荷電障壁の減少が関与することを報告した。今回は、本陽荷電プロ-ベが、果してGBM中のどの陰イオンに結合するかを知る目的で、in vitroで一定イオン強度のもとに、溶液のPHを0.7から8.0まで変化させ、Cuprolinic blueのGBMへの結合性を検討した。即ち、GBMは無処理ラットより腎を摘出し、sieving法にて糸球体を単離、その後超音波処理により単離GBMを得た。この単離GBMを0.3MMgCl_2加酢酸Na緩衝液中で、PHを変化させ、Cuprolinic blueのGBMへの結合性をGBM単位蛋白当りで示した。この結果、PH2.0ではPH5.6に比し半減しており、Carboxyl陰イオンのPKが5.0、sulfate陰イオンのPKが2.0であることを考え合わせると本陽荷電プロ-ベは、carboxyl基に比し、優位にsulfate基に結合すると考えられた。GBMの陰荷電障壁は主としてHSPGより形成されると考えられるので、以上の結果は、GBM陰荷電障壁の定性的及び定量的評価に本方法は適当な手段であると考えられた。
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