研究概要 |
1)抗リン脂貭抗体と臨床病態との相関 前年度に確立したELISA法による抗カルジオリピン抗体(2CL)測定と1/5KPTTによるル-プス抗凝固因子(LAC)測定をSLE患者血清と血漿を用いおこない、臨床像との関連を検討した。その結果、いずれも血栓症、自然流・死産、ワッセルマン反応偽陽性などとの有意の相関を認めた。また、2CLの免疫グロブリンクラスをみると、IgGクラスと強く相関した。1/5KPTTのcut off pointは1、20が有用であった。 2)デキストラン硫酸吸着用カラムを用いた臨床応用 デキストラン硫酸吸着カラムは、陰性荷電による非特異結合ではあるが、2CLやLACなどの抗リン脂貭抗体のみならず抗DNA抗体も吸着することが明らかとなった。そこで、抗リン脂貭抗体のないし抗DNA抗体陽性SLE患者について、デキストラン硫酸吸着体を用いた血漿交換(DSーPP)を週1〜2回,4回反復施行し、抗体価の変動とともに臨床症状に対する効果を観察した。その結果、IgG2CL、IgG抗dsDNA抗体、IgGないしIgM抗ssDNA抗体の高値を示す症例は、DSーPP施行後著明に抗体価の減少を認めた。臨床症状では、皮疹、関節痛などの改善がみられたが、胸膜炎、関貭性肺炎に対する効果は軽微であった。しかしながら、これまで3回の流・死産をくりかえした2CL,LAC陽性SLE患者に、4回目の妊娠でDSーPPを施行する機会をえた。プレドニン5mg/日とアスピリン80mg/日の併用下で、DSーPPを妊娠18週より34週まで週2回の頻度で施行し、34週でfetal distressにより帝王切開せざるをえなかったが、無事女児を出産しえた。今後、抗リン脂貭抗体を有するSLEのみならず抗リン脂貭抗体症候群にも有力な治寮となる可能性が示唆された。
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