研究概要 |
本究究ではインタ-フェロン(IFN)などのサイトカインに対する自己抗体の1.簡便な検出法を確立し、2.疾患特異性、3.免疫担当細胞に及ぼす影響などを明らかにし、自己抗体検索の臨床的有用性を確立することを目的とし、昭和63年度より平成1年度まで研究を行った。サイトカインのうち、ウイルス性慢性肝炎で使用されることの多いヒトrecombinant-IFN-α-2a(r-IFN-α-2a)を先ず取り上げて、それに対する抗体を検出することとした。その結果、以下のことを明らかにした。1.IgGとIgMクラスとに分けてr-IFN-α-2aに対する抗体を測定するELISA系を確立した。2.肝疾患とくに自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変や急性肝炎などの経過中に自然発生的な抗rーIFNーαー2a抗体を高率に認めた。3.r-IFN-α-2a投与に伴いその抗体が出現する症例があり、r-IFN-α-2a治療の効果を減弱させる可能性がある。4.IgGクラスの抗体は中和抗体で、IgMクラスの抗体は非中和抗体である可能性が考えられる。5.r-IFN-α-2aに対する抗体はr-IFN-α-2b、natural IFN-αと交差反応をするが、r-IFN-β,r-IFN-γとは交差反応をしない。6.このELISA系は従来のバイオアッセイ法と比べて、鋭敏であり、手法も簡便であった。患者血清中に出現するこの抗体が、実際に臨床経過にどんな影響を及ぼすか、あるいは免疫担当細胞にどんな影響を及ぼすかまでは、詳細には今回検討できなかったが、抗体の出現に伴って血中の2',5'ーolygoadenyーlate synthetase活性の低下と肝炎の再燃を示す症例もあることより、何らかの影響を及ぼす可能性も考えられるが、症例の集積が必要であろう。今回のrーIFNーαー2aに対する抗体の測定法の確立をモデルとして、今後、他のサイトカインに対する抗体も全く同様に行えると考えられる。
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