1.HBs抗原キャリアにおけるHBc抗体価 HBs抗原キャリアではHBc抗体価は高抗体価と言われているが、HBe抗原陽性キャリアの10%強はHBc抗体は陰性であり(全例、GPT20単位未満)、30数%は高抗体価ではなく、初診時、GPT20単位未満例に限ると半数例が高抗体価ではなかった。HBe抗原陰性キャリアでは90数%が高抗体価であり、残りの例ではHBs抗原が微量存在する例に限られていた。 2.HBs抗原キャリアでみた肝炎とHBc抗体価の関係。 初診時、HBc抗体が陰性であった例も、その後の経過観察期間中に陽性化し、肝炎との関連で高抗体価になる例もみられた。HBc抗体価はごく軽度のGPTの上昇(50単位以下)であっても上昇し、GPT異常の期間が短い場合には再びHBc抗体価は下降した。 肝炎が持続するB型慢性肝炎でみると、肝炎の増悪にやや遅れて、IgA、IgG、IgM各クラスのHBc抗体が上昇する。とくにIgAの変動が顕著であり、診断時に意義がある。さらにまた、HBs抗原キャリアで、他の原因によって肝細胞の破壊が起きた場合にも、IgA・HBc抗体は軽度ながら上昇した。 これらのことからHBc抗体は肝細胞破壊の結果として出現・上昇するものであり、抗体そのものの質的変化はないと考えられた。この点に関して、HBc抗原粒子を用いたinvitroの検討でも質的差は見い出せなかった。詳細な検討を行うにはHBc抗原蛋白を細分化した合成ペプタイドを用いて、HBc抗体の分析を行う必要がある。 3.HBs抗原キャリアの病期と肝内HBV RNAの差。 HBe抗原陽性の無症候性および症候性のキャリアの間では、肝内のHBV RNAに量的差はあっても質的差は見い出し得なかった。RNA間の相対比に関して、さらに検討が必要であった。
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