昭63年度の研究より膵癌γ-GTPは、その糖鎖構造において特異な癌性変化の発現していることがほぼ判明した。そこで、膵癌より精製したγ-GTPを免疫原として、マウスに免疫し、ハイブリド-マ法にてこの特異な糖鎖を認識する単クロ-ン抗体を得ようとした。清浄膵γ-GTPに反応しないが、膵癌γ-GTPに反応するものを目標にクロ-ンを選択したが、膵癌γ-GTPのみならず、正常膵、正常腎、正常肝、肝細胞癌γ-GTPのいずれとも反応する単クロ-ン抗体しか得られず、膵癌γ-GTPのみに反応する特異な抗体は得られなかった。さらに、これらの抗体は、いずれもγ-GTPのペプテド部分を認識し、糖鎖部分に反応するものでなかった。γ-GTPは糖を多量に含有する糖蛋白であるが、糖鎖部分の免疫原性がペプチド部分に比して、弱いため、膵癌γ-GTPの糖鎖部分を認識する特異な単クロ-ン抗体が得にくいのであると思われる。現在、特殊な方法を工夫し、特異な単クロ-ン抗体を得ようとして、実験を継続中である。 昭63年度の検討で膵癌γ-GTPの癌性変化は肝細胞癌(HCC)γ-GTPのそれと類似しているという成績が得られたので、この点をさらに解明するため、6例のHCC組織よりγ-GTP精製し、比較検討した。電気泳動度ではHCCγ-GTPのほうが膵癌γ-GTPより遅延している場合が多く、また、electrofocusing chromatographyによる等電点ではHCCγ-GTPが膵癌にγ-GTPよりも明らかに高値であった。ConAに対する親和性では膵癌γ-GTPのほうが高い場合が多かったが、LCAに対する親和性では両者に明らかな差異はなかった。さらに、E-EPHに対する親和性はHCCγ-GTPのほうが明らかに高い場合が多かった。以上より、膵癌γ-GTPは、slalic acidの減少やbisecting GlcNACなどの増加などHCCγ-GTPと同様な方向の糖鎖構造の変化していることが示唆されているが、その程度は一般にHCCγ-GTPよりも低いものと思われる。
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