膵癌γ-GTPの癌性変化を明らかにしようとして、正常膵2例、膵癌5例、正常肝2例、肝細胞癌(HCC)6例および正常腎1例より、γ-GTPを分離精製し、各々のγ-GTPの性状を比較検討した。(1)膵癌γ-GTPのPAGEによる電気泳動度は5例中4例で、正常膵癌γ-GTPに比して明らかに遅延していた。(2)膵癌γ-GTPの等電点はHCCγ-GTPと同様に、いずれも正常に比して高かった。このような等電点の差異はノイラミニダ-ゼ処理により小さくなった。(3)膵癌γ-GTPのConA親和性は5例中2例で増加していた。また、LCA親和性は5例中4例で明らかに上昇していた。(4)正常膵や正常肝γ-GTPはE-PHAに大して殆ど親和性を示さないのに対し、膵癌γ-GTPのE-PHAに対する親和性は5例中2例で明らかに増加し、他の1例でもその傾向がみられた。(5)ポリクロナ-ル抗体を用いた検討では膵癌γ-GTPは正常膵、正常肝、正常膵、HCCの各γ-GTPとの間に抗原性の差異は認められなかった。以上より、膵癌γ-GTPは正常膵γ-GTPに比してSialic acidの減少、fucoseとbisecting GTcNAcの増加など糖鎮構造において変化していることが示唆され、それはHCCγ-GTPにみられる癌性変化と類似した点を有すると推察される。 膵癌γ-GTP糖鎮における癌性変化を認識する単クロ-ン抗体を得ようとして、膵癌より精製したγ-GTPを免疫原にマウスのハイブリド-マ法を行った。得られた単クロ-ン抗体は膵癌γ-GTPのみならず、正常膵、正常腎、正常肝、HCCγ-GTPのいずれとも反応した。また、いずれもγ-GTPのペプチド部分を認識し、糖鎮部分に反応するものでなかった。γ-GTPは糖を多量に含有する糖蛋白であるが、糖鎮部分の免疫原性がペプチド部分に比して弱いため、膵癌γ-GTPの糖鎮部分を認識する特異な単クロ-ン抗体が得にくいのであると思われる。現在、特殊な方法を工夫し、特異な単クロ-ンを得ようとして、実験をすすめている。
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