研究概要 |
Clostridial IgA proteaseの精製は、Clostridium ramosum M.O.-6株の培養上清5リットルを材料に、0.45飽和硫酸アンモニウムによる塩析抽出、Q-Sepharoseイオン交換クロマトグラフィー、Cellulofine GSL 2000ゲル濾過、FPLCシステムMore Qカラムにより行なった。得られた標品は、SDS-polyacrylamide gel electrophoresis上、分子量10,500の単一bandであり、pIは4.57であった。 腸分泌液中分泌型IgA(sIgA)は、9例の小腸還流液および10例のポリエチレングリコールによる腸管(大腸)洗液より、抗α鎖結合Sepharose-4Bにてtotal sIgAを、Jacalin lectin結合Sepharoseー4BにてsIgAl(IgAlサブクラス)を精製した。 これらの精製腸管分泌液中sIgAについて、Bacteroides vulgatus、B.fragilisおよびClostridium ramosumに対する菌体凝集抗体活性を検討した。その結果、10例中1例の大腸液より精製したsIgAおよびsIgAlにB.vulgatusに対する菌体凝集抗体活性が、また9例中5例の小腸液より精製したsIgAlにC.ramosumに対する菌体凝集抗体活性が見出された。 現在、これらの菌体凝集抗体活性のみられた腸管分泌液中sIgAを選択して、対応細菌に対する凝集抗体価に及ぼす精製Clostridial IgA proteaseの作用を検討中である。未だpreliminaryではあるが、IgA proteaseは抗体活性そのものは抑えないが、凝集抗体としての活性を抑制することを示唆する結果を得ている。この検討を進める上での問題点は、小腸還流液や大腸洗液中のsIgAの大半がdogradationを受けていて、高力価の凝集抗体価を有するsIgAを得難いことであり、今後、比較的にintactに保たれている腸管粘液からのsIgAの分離により結論を出したい。 これまでに得た結果については、平成元年4月に開催の第36回体液蛋白会議(開催地ロンドン)で成果を公表の予定である。
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