慢性膵炎の病態に関して、アルコール性および特発性ともに膵管内圧の上昇が認められ、アルコール性では膵管圧と乳頭部圧運動の有意な相関があることが知られている。膵管圧の上昇が、乳頭部運動異常による膵液排出障害か、腺房細胞障害から液性状の変化による相対的な排出障害か、明らかにされねばならない問題である。本研究では膵管圧と、筋電計による乳頭部運動の変化を追跡し、アルコール性慢性膵炎の成因における乳頭部運動異常および圧上昇の意義を追求した。 1)日本猿におけるアルコール性膵炎あるいは膵液過分泌状態の作成:Lieber飼料に類似した液体飼料を平均摂取カロリーは約200ー400カロリー/日、アルコールとして5ー7g/Kg/日となるよう飼育中である。現在、3〜10カ月経過した所であり、慢性膵炎あるいは膵液過分泌状態を作成中である。 2)胃内アルコール投与実験における主膵管圧および乳頭部運動の測定:日本猿をハローセン麻酔下に開腹後、十二指腸乳頭部に筋電図用白金電極を装着し、また膵尾部を約1ー2cm切除し主膵管に18G耐圧チューブ挿入固定した。それぞれコード、チューブを腹部正中より導出し、固定後閉腹した。手術の影響の除かれた5ー10日後より乳頭部筋電図および膵管圧を熱式記録計に連続記録するよう準備した。30% Ethahol 20mlを胃内投与後の膵管内圧は、負荷前に平均8.2mmHg、後5分で平均8.9mmHg、10分で8.5mmHg、15分で8.9mmHg、20分で9.2mmHgを示し、筋電図上Spike componentは、負荷時に平均4.8/min、後5分で平均3.7/min、10分で平均4.0/min、15分で平均3.1/min、後5分で平均3.7/min、10分で平均4.0/min、15分で平均3.1/minを示した。従って胃内アルコール投与の急性実験では乳頭部運動に抑制的に作用し、膵管圧は上昇することが明かとなり、アルコール性慢性膵炎の成因に乳頭部運動低下に伴う膵管圧上昇が重要である可能性を示唆した。
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