研究概要 |
過去15年間の劇症肝炎治療の経験に基づき、血中の中分子領域(分子量1500ー5000)に本質的な肝性昏睡起因物質が存在する事を想定した。そして、臨床的には、これまでのいずれの方法より高能率かつ安全な中分子除去方法としてPMMA膜血液濾過透析法を開発し、これと血漿交換を組み合わせる事により極めて強力な人工肝補助療法を確立した。更にウイルスの持続感染の持続する非A非B型劇症肝炎に対してはインターフェロン療法を組み合わせる事により、過去3年間12例の劇症肝炎中8例(66.6%)を救命し、欧米の肝移植に対抗し得る治療法を確立した。 基礎的には、中分子昏睡起因物質を肝不全のため肝での代謝を逃れて血中に蓄積し、脳内に移行して昏睡起因性を発揮するペプチドとの想定のもとに、デイメチルニトロサミン投与により作成した急性肝不全ラットにトレーサー・アミノ酸を投与し、それを取り込んで血中、脳中に出現する中分子量物質の分離を試みた。分析方法はSG25ゲル濾過、逆層系液体高速クロマトグラフィー、薄層ゲルクロマトグラフィーとした。まず、^3Hーheuを用いて実験を行った結果、肝不全ラットの血中、脳内に^3Hーheuを取り込んだ中分子量物質が出現する事、その量は昏睡度と相関する事、血中量と脳内量が高度に相関する事から血中物質の脳内への移行が推定される事、上記3法の分析によりコールドの夾雑物と完全に分離した単一物質として精製し得る事を明らかにした。現在、その収量を増加させ、構造決定を行っている過程である。一方、更に入手可能な18種のトレーサー・アミノ酸を用いて同様の実験を行った結果、Val,Gle,Lys,Arg,Ala,hysは確実に中分子量物質に取り込まれている事、Phe,Trp,His,Pro,Asp,Gln,Ser,Glu,Glyは取り込まれている可能性がない点が明らかとなり、構造が明確になりつつある。
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