研究概要 |
1.in vitro 実験:DMOーNaHCO_3水溶液(〔DMO〕:7.7×10^<ー2>〜7.7mM,[HCO_3^ー]:12.5〜75mM)中でのCaCO_3の溶解度は、DMOーH_2O溶液に比して低く,[HCO_3^ー]が高くなるにしたがってpHに対する直線性は消失し,頭打ちとなった。クエン酸ーH_2O溶液中でのCaCO_3の溶解度はDMOーH_2O溶液と同様であったが,クエン酸ーNaHCO_3溶液中では,同モルのDMOーNaHCO_3溶液中に比してCaCO_3の溶解度は高値を示した。すなわち,DMO,クエン酸いずれにおいても,その非解離型のH^+がCaCO_3の溶解過程に関与していると考えられる。両有機弱酸から遊離するH^+に差があるために,HCO_3^ーによって緩衝される程度が異なるため,結果としてCaCO_3の溶解度に差が生ずると推測される。2.in vivo 実験:慢性胃・膵瘻犬を用い,セクレチン刺激下にDMO 50,100および200mg/kgを静注した。膵液HCO_3^ー分泌は用量依存性に低下し,200mg/kg静注により,膵液量のみならず,膵液Na濃度も低下した。膵液pHは一定に保たれること,膵液K濃度も一定であること,およびDMOの膵液中への排泄率はDMO投与量に関係なくほぼ一定(2.3〜2.6%)であることが判明した。3.臨床試験:膵石症25例(アルコ-ル性15例,非アルコ-ル性10例)にDMOの前駆物質であるトリメタジオン(TMO)を0.6〜1.5g/日経口投与した。5ヵ月以上のTMO療法期間中,50%以上の膵石の縮小ないし減数を5例(20%),部分的溶解を9例(36%)に認めた。膵性糖尿病12例(48%)中,7例では経口剤のみでコントロ-ル可能であった。膵外分泌機能を検索しえた7例中3例において,TMO療法中に機能障害が改善した。一旦生成された膵石による膵実質の進行性破壊に対し,膵石の溶解消失や膵石の増大,増加を防止することは,病態生理学的にも臨床上も意義あることと考えられる。
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