リポソームによる肺動脈圧上昇反応は肺毛細血管内マクロファージにリポソームが取り込まれ、主にトロンボキサンを放出する事による。この反応は表面電荷の異なるリポソームで違った。これは肺毛細血管内マクロファージのリポソームに対する反応にその表面電荷が関与している事を示し、肺毛細血管マクロファージの病態生理を考える上で新知見である。〔方法〕:リポソームはコレステロール、フォスファチジールコリン、を基にフォスファチジールグリセロール(マイナス、以下PGリポソーム)フォスファチジールセリン(マイナス、PSリポソーム)、ステアリールアミン(プラス、SAリポソーム)、コレステロール、フォスファチジールコリンのみ(中性リポソーム)の4種類を作成した。肺動脈、頸動脈にカテーテルを留置した5頭の覚醒羊にリポソーム0.05〜3.2μmol/kgを1時間おきに静脈内投与し肺動脈圧の変化を測定し、そのdose-response曲線を求め比較した。〔結果〕:PGリポソームが一番強く肺動脈圧を上昇させ、表面が同じマイナスに荷電したPSリポソームとプラスに荷電したSAリポソームが中程度に上昇させた。興味ある事に表面荷電が中性のリポソームでは全く肺動脈圧上昇は起こらなかった。〔考案〕:リポソームによる肺動脈圧上昇反応はリポソームの表面荷電の違いで異なる。中性のリポソームでは全く肺動脈圧上昇は起こらない。この現象については1)中性に荷電したリポソームではマクロファージに取り込まれるがトロンボキサン、PAFといったケミカルメディエーターを放出しない。2)全くマクロファージに取り込まれることなく肺毛細血管内を通過している可能性がある。今後、肺毛細血管内マクロファージを分離し、この反応を解析する予定である。
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