研究概要 |
昨年と同様にリポソ-ム(lipo)を逆相蒸発法にて作成した。昨年度はリポソ-ムに対する肺血管マクロファ-ジの反応(トロンボキサンを主にしたアラキドン酸代謝産物の放出)の相違は、リポソ-ムの組成あるいは表面電荷の違いによるものか不明であった。そこで今回は同じ表面電荷である異なったリポソ-ムをマイナス、中性のリポソ-ムを作成し、羊に対する肺動脈圧上昇を検討した。マイナスのリポソ-ムはPS-1poとPG-1ipoを、中性のものはPCとコレステロ-ルで作ったPC-1ipoとPE-1ipoを作成した。これらはリン脂質の構成上その電荷は全く同じ構造に位置している。同じマイナスのリポソ-ムでも肺動脈圧上昇に対してはPG-1ipo>PS-1ipoであった。PC-1ipoは全く肺動脈圧を上昇させないが同じ中性のリポソ-ムであるPE-1ipoは強く肺動脈圧を上昇させた。これらの反応には動脈血中のトロンボキサンB2の上昇をともなっていた。以上の事実は肺血管内マクロファ-ジはリポソ-ム構成成分であるリン脂質の電荷の相違に対して反応しているのではなくリン脂質の違いそのものに対して反応、トロンボキサンの放出をしていることを明らかにした。肺水腫を引き起こすエンドトキシンは大腸菌の膜成分であり、肺血管内マクロファ-ジがエンドトキシンと反応し、肺水腫を引き起こすが、その機序にエンドトキシンの膜構成成分の違いが関与している可能性を示していると考えられる。当初の目標である、肺血管内マクロファ-ジを分離し、種々のリポソ-ムによる反応をin vivoで調べようと、Bertramら方法により試みたがその分離は成功しなかった。しかし、今回の成績は肺水腫が引きおこされる機序にせまることが出来、当初の目標に合致した結果である。 *本文中の略字 CHOL:コレステロ-ル,PC:フォスファチジルコリン,PS:フォスファチジルセリン,PE:フォスファチジルセリン,PG:フォスファチジル,SA:ステアリルセリン
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