気管支喘息をはじめとするアレルギーの発症にIgE抗体が重要な役割を果たしている。従って、IgE抗体産生の制御が疾患の治療につながる。最近ヒトのBリンパ球細胞膜表面には、肥満細胞・好塩基球細胞膜表面に存在する高親和性IgEレセプター(FcεRl)とは異なる低親和性IgEセレプター(FcεRII)が証明されている。現在このFcεRIIはBリンパ球の分抗原である可能性が示唆されており、IgE抗体産生の調節に重要な役割を果たしていると考えられている。このレセプター分子がアレルギー疾患患者血液中でIgEとの複合物を形成していることが証明されているが、その病態生理的な意義は明らかでない。 本研究者等は、気管支喘息をはじめとするアレルギー性疾患患者血清中にIgEにたいするIgGクラスの抗IgE自己抗体が存在することを証明しており、この抗体が血清中で免疫複合体を形成していることを観察しおり、IgE産生の調節になんらかの役割を果たしていると推定している。そこで、本年度は、抗IgE自己抗体がこのFcεRIIの機能発現にいかな調節作用をしているかを解析し以下の結果をえた。 1.気管支喘息患者末梢血液Bリンパ球におけるFcεRII量と血清IgE値、IgE自己抗体価、病型・病態とのあいだに有意な相関が認められなかった。 2.FcεRIIをもつB細胞株RPMI8888へのIgEの結合を抗IgE自己抗体が止した。 3.ヒト末梢血液リンパ球にIL-4を添加するとFcεRIIの発現が増強するこの実験系に抗IgE自己抗体を添加したところBリンパ球上のFcεRIIの発現を有意に抑制した。 以上の事実は抗IgE自己抗体がヒトにおけるIgE抗体産生の調節に関与していることを強く示唆する。
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