研究概要 |
好酸球は、気管支喘息やPIE症候群などの呼吸器疾患患者の病変局所や末梢血中で増加し、病態と密接に関わると考えられる。しかし、この好酸球増多の機序は未だ充分明らかでない。本研究では、この好酸球増多機構の解明とその調節機序を明らかにすることを目的としている。当核年度の研究では、好酸球が骨髄中の好酸球前駆細胞から分化増殖するのに必要な好酸球コロニー刺激因子(E-CSF)の関与を明らかにすることとし、好酸球増多を伴った胸水中のE-CSF活性の測定、好酸球増多を伴った各種呼吸器疾患患者の末梢血単核球やリンパ球分画からのE-CSF産生を検討した。その結果、好酸球増多のみられたPIE症候群患者の胸水中には、対照とした肺癌患者の胸水中に比べE-CSF活性の著明な増加がみられた。また、好酸球遊走活性も認められ、これらが本症での胸水中好酸球増多の重要な要因と考えられた。尚、このE-CSFは、透析されず、液体クロマトグラムで分子量約50,000の物質であると考えられた。次に、末梢血好酸球増多を伴った気管支喘息患者やPIE症候群患者の末梢血リンパ球からのE-CSF産生の検索では、当核患者の末梢血単核球の3日間培養上清中に、健常者のそれに比べて多くのE-CSF活性がみられた。このことから、好酸球増多を伴う気管支喘息やPIE症候群では、末梢血単核球からのE-CSF産生は亢進しており、これが好酸球増多に重要な関わりを有すると考えられる。また、このE-CSF産生は、PHAやIL-2刺激により増加した。さらに、このE-CSFは主にロゼット形成T-リンパ球から産生され、またその産生には単球の補助効果も認められた。今後は、これらのE-CSFの本態の検索と、その産生調節を明らかにすることで、病因、病態の解明や有効な治療法開発への応用も可能となるものと考えられる。
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