研究概要 |
好酸球は、気管支喘息、PIE症候群あるいはアレルギ-性鼻炎などの呼吸器疾患の末梢血や病変局所で増加し、病態と密接に関わっていると考えられる。本研究は、この好酸球増加機構とその調節機序を解明することを目的としている。このために、骨髄中の好酸球前駆細胞を刺激して好酸球コロニ-形成を促進させる因子(E-CSF)の関与を明らかにすることとした。初年度の研究から、好酸球増多を示した胸水中にはE-CSF活性が増加していること、また、末梢血中で好酸球増多のみられた呼吸器疾患患者の末梢血中単核球からは、E-CSF産生の亢進が認められ、好酸球増多にはE-CSFが重要な役目を有することが示唆された。また、胸水中には好酸球遊走因子活性も認められ、局所での好酸球増多に関与していると考えられた。2年度には、胸水中のE-CSFの性質の検討と末梢血単核球からのE-CSF産生機序に関する研究を行なった。その結果、好酸球増多のみられた胸水中のE-CSFは、分子量が約50,000で、抗IL-5抗体処理により、活性の部分的抑制がみられ、胸水中E-CSFの一部はIL-5である可能性が示唆された。一方、単核球からのE-CSF産生は、IL-2、PHAあるいは抗原物質などの刺激により亢進することが知られた。更に、これらの産生は、ステロイドや免疫抑制剤であるFK-506によって抑制され、薬物によって調節される可能性が示めされた。また、E-CSFの主な産生細胞は、T-リンパ球であり、単球はその補助的作用を示すことも明らかとなった。以上、本研究により、呼吸器疾患患者にみられる好酸球増多は、抗原等の刺激によりT-リンパ球から産生されるE-CSFが関与していることが明らかとなった。また、この産生は薬物により調節される可能性があり、今後、病態の解明と共に、治療への応用も考慮される。
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