食道超音波内視鏡.MRI.CTの3モダリティを対比した縦隔の動的画像解剖学的研究

1989 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 63570353
• 研究機関: 札幌医科大学
• 研究代表者: 名取 博 札幌医科大学, 医学部, 助教授 (00102260)
• 研究分担者: 五十嵐 知文 札幌医科大学, 医学部, 助手 (80212736) ; 森 雅樹 札幌医科大学, 医学部, 助手 (40175633) ; 常松 和則 札幌医科大学, 医学部, 助手 (00142365)
• キーワード: Endoscopic ultrasonography / Computed tomography / Magnetic resonance imaging / Mediastinum / Ultrasonographic anatomy

研究概要

食道、心大血管系、気管気管支系、神経系を始めとする縦隔の主要構造は生理学的に体長軸方向に機能的つながりを持っている。縦隔の病態生理の画像診断的解析には体長軸に沿う縦隔の画像解剖学とreal-timeの動的断面像の知識の集積が必要である。MRIによる縦隔の全体像を軸に、経食道超音波内視鏡によるmm以下の高解像度の動的画像を加え、既に画像的知識が蓄積されているCT像と対比して、縦隔の画像解剖学的解析を行った。
手術、剖検所見との対比により、MRI、超音波の体長軸方向の画像から縦隔の主要構造が容易に理解できた。心大血管腔が良好に描写でき、血流情報がとれる点も有利である。心原性、呼吸性運動によるア-ティファクトでMRI画像では充分に分析しえない臓器や組織の内部構造を超音波像で補い、超音波像の観察視野外の部分をMRIで補う相補的な画像分析により、多方向の体長軸断面像により縦隔の立体的な分析が出来た。膜状または面をなす構造の分解能は超音波が最も良く、CT、MRIの順であった。体長軸方向のつながりを重視したMRIと超音波の体長軸断面像を作製し、画像解剖学的模式図を描いた。
本研究では、X線CT像、MRI横断像により体長軸断層面を設定し、MRIによる胸部の矢状断面、前額断面、および斜位の体長軸断層像と、経食道超音波内視鏡による食道周囲の動的な体長軸断層像によって、総合的な縦隔の画像解剖学的情報を収集出来ることを示した。経食道的な縦隔の超音波解剖学的所見は超音波内視鏡の視野による制限が大きいので、linear型のみならずconvex型の超音波内視鏡を使用して内容の充実につとめることが望ましい。今後は手術、剖検所見との対比症例をさらに収集し、縦隔の病態生理、画像解剖学的構造の変化、破壊像の一般的な特徴についても検討し、より実証的、動的な縦隔の画像解剖学を確立したい。

研究成果

• [文献書誌] Natori H,Igarashi T,Nakata H,Mori M,Yokokawa K,and Suzuki A.: "Endoscopic ultrasonographical anatomy of the mediastinum." J Ultrasound Med. 7. 8187 (1988)
• [文献書誌] Natori H,Igarashi T,Nakata H,Mori M,Yokokawa K,and Suzuki A.: "Transesophageal ultrasonographic longitudinal anatomy of the mediastinum." Asian Pacific Society for Respirology(APSR)Abstract. 153 (1988)
• [文献書誌] 五十嵐知文,名取博,鈴木明: "呼吸器疾患の画像診断、超音波、正常像と読影上の注意" 診断と治療. 77. 713-718 (1989)
• [文献書誌] 五十嵐知文,名取博,水谷保幸,中田尚志,鈴木明: "縦隔腫瘍の超音波診断" 日本超音波医学会講演論文集. 54. 603-604 (1989)
• [文献書誌] 名取博,森雅樹,五十嵐知文,常松和則,鈴木明: "胸部X線写真上縦隔の異常陰影を指摘された3例" 内科. 63. 924-930 (1989)
• [文献書誌] 名取博,森雅樹,五十嵐知文,中田尚志,横川和夫,森裕二,小場弘之,本田泰人,鈴木明: "経食道超音波内視鏡、MRI.CTを対比した縦隔の画像解剖学" INNERVISION. 5. 2-7 (1990)
• [文献書誌] 名取弘: "胸膜.肺.縦隔.放射線医学大系、特別巻4A.超音波診断I" 中山書店, 11 (1988)
• [文献書誌] 名取弘,五十嵐知文: "呼吸器領域の超音波診断、肺内病変、日本超音波医学会編:超音波診断" 医学書院, 12 (1988)