研究概要 |
1.C.pneumoniae感染症の血清疫学的検討 前年度に引続き、これまでに中国地方在住の1745名の血清についてMFA法にて抗体価測定を行った。TWAR特異抗体保有率は小児コントロ-ル群、呼吸器感染症群(0〜15歳)でそれぞれ38.4%,29.8%に認められ、両群間に有意差は認めなかった。一方、成人ではコントロ-ル群、患者群においてそれぞれ67.4%,74.2%と、C.pneumoniaeの高い抗体保有が示され、しかも患者群に有意に(p<0.005)高率に認められた。性差は成人において両群とも男性に高率であった。年令別保有率は、両群とも5歳以下では10%以下と低値であったが6歳以後急激に上昇し、15歳までに60%以上に達した後はほぼ横這いで推移しており、しかも患者群において、常により高率であった。以上の結果より、C.pneumoniaeは我が国においても極く一般に存在し、また呼吸器感染症の病原体として大きく関与していることが示唆された。 2.C.pneumoniae感染症の臨床的検討 TWAR抗体価の推移や臨床経過、また肺病巣組織中での直接証明から、これまでに22症例を本症の急性感染と診断し得た。臨床診断は急性気管支炎7例、肺炎1例、DPBと気管支拡張症の急性増悪が各1例、咽頭炎が1例、胸膜炎が1例であった。また血清学的に本感染症の家族内感染と考えられた例も経験した。治療ではテトラサイクリン系、マクロライド系、ニュ-キノロン系の薬剤が有効であった。 3.C.pneumoniaeの分離 これまでに本症が疑われた約180症例より分離を試みたが、現時点では成功していない。現在、分離のための基礎的検討を、臨床材料採取法、至適培養細胞の選択等について行っている。
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