研究課題/領域番号 |
63570363
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
塚田 直敬 信州大学, 医学部附属病院, 文部教官講師 (90020792)
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研究分担者 |
足立 憲昭 信州大学, 医学部附属病院, 文部教官助手 (80151075)
高 昌星 信州大学, 医学部附属病院, 文部教官助手 (80143981)
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キーワード | 多発性硬化症 / 標的細胞 / 脳血管内皮細胞 / T-リンパ球 / 細胞障害性 |
研究概要 |
多発性硬化症(MS)の病因には免疫的因子が関与しているとされている。しかしこの疾患において抗原物質、標的細胞が一体なんであるか依然として不明である。MSで脳血管内皮細胞が抗原提示細胞として重要な役割をしていることがわかってきており、免疫担当細胞であるリンパ球とこの脳血管内皮細胞との接触がMSの原因を究明する上で重要な所見である。今回我々はMS患者末梢血中のリンパ球を脳血管内皮細胞と反応させその細胞障害性を検討した。エフェクター細胞は25例のMS、10例の対照群及び8例の他の神経疾患患者末梢血のエフェクター細胞を用いた。細胞数は2×10^4、2×10^5、2×10^6に調整した。標的細胞はラット脳をホモジナイズしてMrsaljaの方法で血管内皮細胞を分離し、ConAを加えて培養した。この1週間目の培養脳血管内皮細胞2×10^4に^<51>Crをラベルして標的細胞として、エフェクター細胞に対して1:1、1:10、1:100、の比で患者及び対照群のリンパ球をマイクロプレートで5時間反応させた。MS患者リンパ球2×10^6、2×10^5、2×10^4個による内皮細胞融解率は、14.0±17.8%、15.2±22.1%、25.2±25.8%で、2×10^6、2×10^5ではいずれも対照群に比べて有意の差を認めた(p<0.05、p<0.01)。また病勢が活動期にある症例のみでは、16.9±17.7%、27.1±25.0%、45.2±30.5%で更に高値(p<0.01、p<0.01、p<0.001)を示し、更にT:Eの比が高値を示す程lysisは高値を示す傾向があった。また抗血管内皮細胞抗体、抗Ia抗体を加えることによりそれぞれ2×10^5、2×10^4細胞個のとき、有意にブロックされた(p<0.02、p<0.05)(p<0.01、p<0.001)。MS患者では末梢血中に脳血管内皮細胞を標的とするTリンパ球の細胞障害性が存在することが判明した。以上によりMS末梢血中の脳血管内皮細胞を標的とする細胞障害活性の存在はMSの初期の病因的意義を持つことが考えられた。
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