正常な老化における心機能と脳循環、脳萎縮の関連

1988 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 63570365
• 研究機関: 島根医科大学
• 研究代表者: 小林 祥泰 島根医科大学, 医学部, 講師 (00118811)
• 研究分担者: 山口 修平 島根医科大学, 医学部, 助手 (80135904) ; 岡田 和悟 島根医科大学, 医学部, 助手 (00169103)
• キーワード: 健常高令者 / 局所脳血流量 / 脳MRI / 心拍出量 / re-breezing法 / 脳血管抵抗

研究概要

6年前から脳血流について追跡調査中の地域老人ホーム在住健常高齢者30名(平均75.4才)について、Xe133吸入法による局所脳血流量、東芝製常伝導MRIによる脳の形態学的所見、言語性、動作性知能評価、肺機能検査を行い、さらに同時に非侵襲的な質量分析器を用いたアセチレンガス、炭酸ガス、アルゴンガス、酸素、窒素の混合ガスのre-breezing法による心拍出量、酸素消費量を測定した。高齢者のためすべてのデータが得られたのは25例であった。肺機能の著しい低下例は含まれていない。全脳平均血流量は平均54.2ml/100g/minと若年健常者に比して優位に低値であった。心拍出量は体表面積で除したQc/BSAで2.1±0.4L/min/m^2と成人の正常値に対して低値を示した。また体表面積当りの酸素消費量も110±34ml/min/m^2と低値であった。これは軽症脳梗塞患者23例の平均Qc/BSAで2.6±0.48ml/min/m^2、VO2/BSA154.6±53.5ml/min/m^2よりも低値であった。本法ではQcが心力カテーテル法よりも低くでることが既に報告されており、絶対値については今後検討を要すると思われる。しかし、Qc/BSAおよびVO2/BSAと脳血流との間に有意の相関はみられず、平均血圧とも相関しなかった。しかし、脳血管抵抗と心拍出量との間にはγ=0.441と弱いながらも有意の相関が得られた。MRI上潜在性脳梗塞が約30%にみられ、periventricular high density(PVH)が60%にみられたが、心拍出量とMRI上の所見との間に関連はみられなかった。また脳血流とMRI上の所見とも関連がみられなかった。知的機能についても同様であった。結論:健常高齢者において心拍出量は脳血流および平均血圧と有意な相関関係を示さなかったが、脳血管抵抗とは有意の負相関を示し、心拍出量が多いほど脳血管抵抗が低下する傾向があることを示唆していた。このことは従来の報告にない新知見であるがその機序等について今後検討を要する。

研究成果

• [文献書誌] 山下一也、小林祥泰、山口修平、木谷光博、岡田和悟、藤原茂芳、下手公一、恒松徳五郎: 日本臨床生理学会雑誌. 18. 181-188 (1988)
• [文献書誌] 小林祥泰、山口修平、小出博己、木谷光博、岡田和悟: 脳卒中. 10. 106-110 (1988)
• [文献書誌] 山口修平、小林祥泰、岡田和悟、有元佐多雄、山下一也: 脳卒中. 10. 221-226 (1988)
• [文献書誌] 小林祥泰: Dementia. 2. 139-145 (1988)
• [文献書誌] 小林祥泰、山口修平、岡田和悟、福田準、小出博己、下手公一、ト蔵浩和、須山信夫、恒松徳五郎: 脳卒中.
• [文献書誌] Kobayashi,S.;Yamaguchi,S.;Okada,K.;Yamashita,K.;Koide,H.;Fukuda,H.;Tsunematsu,T.: J.CBF Metabolism. 9. (1989)
• [文献書誌] Kobayashi,S.;Fujiwara,S.;Arimoto,S.;Koide,H.;Fukuda,H.;Himode,K.;Yamaguchi,S.;Okada,K.;Tsunematsu,T.: "Hair alumnium in normal aged and senile dementia of alzheimer type "Alzheimer's disease and related disorders"" Alan R.Liss and Inc., (1989)