[1]高齢者25名に於ける計討(1988年度)において133Xe吸入法で測定した平均脳血流量と非侵襲的なrebreathing法による心拍出量(QC/BSA)の間にはr=0.28と有意の相関関係は認められなかった。一方、脳血管抵抗と心拍出量の間にはr=‐0.42(p<0.05)と有意の負相関が認められた。常伝導型MRIで撮影した画像の側脳室体部レベルで測定した脳萎縮度BAIは心拍出量と相関を示さなかった。 [2]中壮年者48名における検討(1989年度)で心拍出量は年令とr=-0.319(P<0.05)と有意な負相関を示した。心拍出量は全脳平均脳血流量とr=0.31(p<0.05)と有意の正相関を示した。心拍出量と脳出管抵抗との間にもr=-0.32(p<0.05)と有意の負相関が認められた。岡部式簡易知能評価尺度で評価した言語性知能は心拍出量とr=0.316(p<0.05)と有意の正相関を示した。 [3]健常成人92名(1990年度)において年令とMRI上で定性的に評価した脳室周囲の高信号域(PVH)の程度はr=0.47(p<0.001)と有意な相関を示した。認知機能の客観的指標である音刺激によるodd ball課題による事象関連電位P300潜時も年令と有意な正相関を示した。心拍出量とPVHの程度の間には有意な相関はみられなかった。心拍出量とP300潜時の間はみられなかった。P300潜時とPVHの程度との間には有意な相関は見られなかった。 結語:健常成人において心拍出量は脳血管抵抗と相関し、脳血管抵抗を規定する因人として重要であることが示唆された。また、脳血流量、言語性知能とも相関を示し心拍出量と脳循環生理との関係を再考する必要があることが示唆された。大脳萎縮、大脳白質変化と心拍出量との間に相関は見いだせなかったが、以上の結果は大脳の老化促進に心拍出量の低下が関与している可能性を否定するものではなく今後さらに検討を要するものと思われる。
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