大脳基底核や小脳の障害と手の随意運動の中枢制御との関連を明らかにする目的で、視標追跡記録装置を作製し、記録データの処理方法を検討した。対象は基底核疾患の患者7名、小脳失調症患者7名の計14名で、正常者9名を対照とした。パソコンのディスプレイ上の視標に単純な衝動性運動および複雑な運動を行わせ、被検者に台上のマウスを手で動かすことによってその視標を追跡させた。その時の視標と追跡点の軌跡をパソコンのメモリーに記録し、その誤差の時系列の標準偏差とむだ時間を求めた。その結果、いずれの値も患者群では正常群より大きく、正常と異常の識別は正確に行えた。しかし基底核疾患と小脳失調症との識別はまだ十分には可能にならなかった。 この研究の目的に、当研究費の中から約85万円でパソコンとカラーディスプレイおよびプリンターを購入し、残額は消耗品費や研究打合せ旅費、謝金に用いた。 今後解決すべき問題として、(1)手の運動軌跡の記録法として、マウスを動かすと手が安定するため、自然に近い不安定な状態で運動させる目的で、マウスの代りにディジタイザーに用いて異常を検出し易くする。 (2)対象の年令を考慮する。 (3)基底核障害と小脳障害を鑑別できるような方法、またはパラメータを検出する。 ことがあげられる。
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