研究概要 |
パタ-ンリバ-サル網膜電図の記録は従来、技術的に困難とされ本邦ではまだ臨床的な応用は十分でない。本研究の目的はパタ-ンリバ-サル網膜電図(ERG)・大脳誘発電位(VEP)の正常波形を定量的に分析し、将来の臨床応用の基礎を確立することである。健康人40名(男20,女20)を対象とした。パタ-ンリバ-サル全視野単眼刺激を刺激周波数(1.6Hz、10Hz)、チェックサイズ(15分、30分、60分)、刺激視野全体の視覚(32度)の条件で施行。記録関電極はERGではgold foil電極(刺激眼)、VEPでは正中後頭部電極とした。基準電極はERGではgold foil電極(非刺激眼)、VEPでは正中前頭部電極とした。1.6Hz刺激によるTransient型ERG。VEP記録では、a(P)、b(P)、c(P)の各ピ-クからなるERG波形とP50、N75、P100、N145の各ピ-クからなるVEP波形が得られた。a(p)、b(p)、c(p)の平均潜時(msec)は15分で33.9、60.0、101.3、30分で31.4、56.7、101.1、60分で31.3、54.7、98.7であった。a(P)ーb(P),b(P)ーc(P)の平均ピ-ク間振幅(μV)は15分2.3、3.6、30分で3.0,4.9,60分で3.4,5.8であった。網膜・大脳波質伝達時間[P100ーb(P)]の平均値(msec)は15分で51.0,30分で46.9,60分で47.3,であった。10Hz刺激によるsteadyーstate型ERG・VEP記録では、両者とも10Hzの正弦波様反応波形を呈した。ERGのN1,P1,N2の各ピ-ク、VEPのN1,PI,NIIの各ピ-クについて分析した。N1,PI,N2の平均潜時(msec)は15分で36.4,ー68.8,ー124.6,30分で33.5,ー65.8ー125.7,60分で30.3ー59.2ー116.8であった。Transient型,Steadyーstate型を問わず、パタ-ンERGの潜時はチェックサイズが大きいほど(60分)短縮し、またパタ-ンERGの振幅はチェックサイズが大きいほど(60分)増大した。平成2年度の研究では正常例のデ-タを更に蓄積し、信頼度の高いnormatire dataを確立し、臨床応用を試みる。
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