研究概要 |
健康人114名(平均年齢45歳)を対象として,パタ-ンリバ-サルERG(網膜電図)・VEP(大脳誘発電位)同時記録を行った。刺激は単眼刺激,刺激頻度は0.8Hzと5Hzの2種類,Transient型ERG・VEPおよびSteadyーstate型ERG・VEPを記録した。パタ-ンリバ-サル刺激に用いたチェッカ-ボ-ドの大きさは15分,30分,60分の3種類とした。ERGの記録に際しては2個のgoldーfoil電極を左右の下眼瞼に入れ,刺激眼に入れた方を関電極,非刺激眼に入れた方を基準電極とした。VEPの記録は正中後頭部の関電極,正中前頭部の基準電極から行った。ERG/VEPと年齢の相関をみると,ERG・VEPともに加齢の影響を受け,有意な2次回帰相関が認められた。Transient VEPのピ-ク潜時からTransient ERGのピ-ク潜時を引いた差をRetinoーCortical Time(網膜・大脳皮質伝導時間)と定義した。このRetinoーCorticalTime(たとえばVEPのP50^^ーとERGのa(p)の潜時差)と年齢の相関を調べると有意の2次回帰相関が得られた。このように潜時と年齢についてはERG/VEPともに有意な相関があった。次いで振幅と年齢の相関について検討したところ,ERG振幅が加齢により有意に減衰するのに対しVEPの振幅は加齢と相関しなかった。多発性硬化症,視神経炎,HTLVーI associated myelopathyにおけるパタ-ンリバ-サルERG・VEPを測定した。パタ-ンERGが正常で,VEPの潜時が延長する例,パタ-ンERGが消失または低振幅化,VEPに潜時延長を認める例,パタ-ンERG,VEPともに消失する例などがあった。パタ-ンERG・VEPを同時に記録することにより(1)視神経の純粋な脱髄病変,(2)軸索喪失と神経節細胞の永久的な変性を伴う視神経病変の区別が可能となった。本研究によるデ-タからHTLVーI associated myelopathyの視神経病変を示唆する結果も得られた。こうしてパタ-ンVEPの臨床応用は一段と有効かつ実用的になった。
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