研究概要 |
〔目的〕砂ネズミ一側総頚動脈結紮モデルを用いて、虚血脳においてセカンドメッセンジャー系の変化を局所脳血流量と対比して検討した。 〔対象および方法〕体重70ー90gのmongolian gerbilの右総頚動脈をハロセン麻酔下に、二重結紮し、McGrawのischemic score(1977)が5点以上であった動物のみ使用した。右総頚動脈結紮後5時間59分の時点で^<14>Cーiodoantipyrine(IAP)15μCiを1分かけて静注し、断頭した。この間、経時的に動脈血を採取し、IAP濃度を測定した。脳を直ちに凍結した後、-20℃のクリオスタット内で20μmの連続切片を作製し、ゼラチンスライドに固定した。前頭葉皮質・線条体・視床・中脳・小脳の5レベルでそれぞれ24切片を取り、このうち6切片をIAP、8切片を^3Hーforskolin(FK)、8切片を^3Hーphorbol 12,13-dibutyrate(PDBu)のオートラジオグラム作製にそれぞれ用い、LCBF、FKおよびPDBuの特異的結合を算出した。他の2切片は病理学的検討に使用した。 〔成績〕結紮側のLCBFは、大脳皮質・基底核・海馬を含め大脳半球全体で著明に低下していた。対側半球においてもLCBFの低下が認められた。結紮側大脳半球においてFK特異的結合はLCBF同様に全体的に低下していたが、線状体・淡蒼球・大脳皮質・視床・海馬において有意に低下していた。また、これらの領域において、FK特異的結合はLCBFと有意な正の相関関係を示した。一方、PDBu特異的結合は多くの領域で結紮側は非結紮側に比し軽度であるがむしろ高値を示し、有意差を認めた。また、検討した全ての領域でLCBFとPDBuの結合には相関関係は認められなかった。〔結語〕adenylate cyclase系は虚血により障害され、各領域において障害の程度は脳血流量の低下と密接な関係があることが示唆された。一方、PI systemは虚血に対して比較的抵抗性である事が示唆された。
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