1.液体高速クロマトグラフィ(HPLC)による脳内還元型と酸化型グルタチオンの同時測定法の確立 (1)ラットあるいはマウス脳を、大脳皮質、海馬、視床下部、線条体、中脳、延髄、小脳に分割して、各組織を0.1M過塩素酸で超音波破砕し、遠心後上清をフィルターに通し、この50μlをHPLCに注入した。カラム(Blophase ODS 5μm、Cー18、250×4.6mm)で分離し、デュアルHg/Au電極の還元と酸化電位は-1.0Vと+0.15Vで電気化学的に検出した。これによって脳の微量サンプルからの還元型と酸化型グルタチオンの同時測定が可能となった。 (2)ラット(SーD系、雄、200g)では、還元型と酸化型グルタチオン(nmol/g)は、大脳皮質で686.5±105.5、45.9±11.0、海馬で504.4±85.9、55.9±7.0、視床下部で190.1±50.9、15.4±3.1、線条体で185.1±37.9、33.1±6.3、中脳で441.2±30.8、38.0±5.7、延髄で401.0±48.1、18.4±3.1、小脳で589.8±74.2、58.7±14.1で脳各部位でグルタチオン含有量に差がみられた。すなわち、脳内グルタチオンの細胞防御にはたす役割に部位特異性があることが示唆された。 2.MPTPのマウス脳内グルタチオンに及ぼす効果 マウス(DDY、雄、25g)にMPTP(40mg/kg、皮下注射)を投与して、1、2、4、8、24時間後に脳を7分割した。MPTP投与1、2時間後に線条体、視床下部、延髄でドーパミンとHUAは上昇し、DOPACは減少したが、24時間後にはいずれも減少した。酸化型と還元型グルタチオン比は線条体を除いて、大脳皮質、海馬、視床下部、中脳、延髄、小脳で、MPTP投与1時間後に一過性に増加した。これらのことから、MPTPの神経毒性の発現に脳内グルタチオンペルオキシダーゼ酸化還元系の活性化の関与が示唆された。
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