1.Reserpineの脳内ド-パミンとグルタチオン代謝に及ぼす効果。 (方法)ラット(SD系、雄、250g)にreserpine、2.5mg/kgを腹腔内に注射し、2時間後の脳内ド-パミン(DA)、還元型・酸化型グルタチオン(GSH・GSSG)をHPLCを用いて測定した。(結果)reserpine投与により脳内DAは減少し、DOPAC、HVAは増加した。GSH、GSSGは視床下部、線条体、中脳、延髄で低く、reserpine投与によりGSHは中脳で低下し、GSSGは線条体で低下し、GSSG/GSH比は線条体で低下した。(考案)脳内GSHとGSSGは脳内で特異的分布をなし、reserpine投与によるDA代謝回転の亢進に伴い、グルタチオン酸化還元系の低下が線条体で認められた。 2.MPTPによる脳内グルタチオン代謝の変化に及ぼすCHXの効果。 (方法)マウス(C57BL系、雄、20g)にcyclohexene-1-one(CHX)100mg/kgを腹腔内に注射し、2時間後にMPT20mg/kgを皮下に注射した。1と24時間後の脳内GSHとGSSGを測定した。(結果)MPTP投与1時間後、線条体内GSHとGSSGは変化なかったが、GSSG/GSH比は増加した。CHXの前処置によりGSHとGSSGを減少させておくと、MPTP投与によりGSSG/GSH比は更に増加したが、中脳ではCHX前投与によりGSSG/GSH比は逆に低下した。MPTP投与24時間後、線条体内GSHは減少したがGSSGは変化なく、GSSG/GSH比は増加した。CHX前投与後はMPTPによりGSSG/GSH比は単独投与と同様であった。(考案)CHXにより脳内GSHとGSSGを減少させておくと線条体でMPTP投与によりグルタチオン酸化還元系の活性化はおこり、中脳では1時間後には抑制され、24時間後に逆に亢進した。 以上により、正常状態あるいはL-DOPA投与などによるDA代謝の亢進に伴い酸化的ストレスが生じ、神経細胞障害が起り得ること、その際線条体と中脳が特に影響を受け易いこと、GSHはグルタチオンペルオキシダ-ゼ系の律速因子ではなく、酸化的ストレスが重要であることが示唆された。
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