研究概要 |
人、及び動物において、血圧概日リズムの異常を検討した。人においては、昼高く,夜間就眠時に低下する概日リズムが認められる。この正常な概日リズムは、間脳-下垂体-副腎系の異常により、消失、あるいは逆転した。即ち、人クッシング症候群、大量の糖質ステロイドの投与は、人の夜間降圧を消失せしめ、時に夜間昇圧をもたらした。しかしながら、原発性アルドステロン症においては、血圧概日リズムの異常は認められなかった。更に、甲状腺機能亢進症においても、血圧概日リズムの異常が認められた。こうした内分泌疾患以外では、糖尿病性神経症、慢性腎不全において定形的に概日リズムは消失した。その他、夜間無呼吸症候群、悪性高血圧症、高齢者のどで血圧概日リズムの異常が認められたが、腎血管性高血圧症においては,正常な血圧概日リズムが認められた。こうした事実から、人血圧の概日リズムは、主として睡眠-覚醒に伴う交感神経リズムに由来し、交感神経のリズムに影響を与えるいかなる部分の障害も血圧概日リズムを障害させると考えられた。 また、自然発症高血圧ラット(SHR)において、高血圧発症過程におけるラット血圧の概日リズムが検討された。若年(5/6W)SHR及びウィスタ-京都ラット(WKY)において、血圧概日リズムに異常が認められた。即ち、SHRにおける夜間昇圧-昼間降圧の位相は、週令と共に、昇圧と共に、clock-wiseの偏移を示した。一方、WKYにおける血圧概日リズムは、週令によって影響を受けなかった。また心拍数の概日リズムは、SHR、WKY、共に週令の影響を受けなかった。以上の結果より、SHRの高血圧発症機転を血圧概日リズムの異常の発生に、共通の機構を有する可能性が考えられた。
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