研究概要 |
1.側副血行血管新生による労作性狭心症の治療 安定労作性狭心症10例を対象として、ヘパリン5,000IU静注10、20分後にトレッドミル運動負荷を標準ブルース法により、狭心痛が出現する迄1日2回計20回施行した。最大運動時間、胸痛発作出現時およびST低下(0.1mV)発現時の心拍数X収縮期血圧の値は、治療によりそれぞれ44%、35%、19%だけ有意に増加した。治療後の冠動脈造影により、全例で側副血行循環の発達が確認された。運動のみ20回施行した6例では側副血行循環は有意に発達しなかったので、ヘパリンが血管新生を促進させ、側副血行循環が充分発達したものと結論した。 急性心筋梗塞後の側副血行循環の発達 梗塞前狭心症を有さなかった初回梗塞31例を対象として慢性期冠動脈造影により梗塞後の側副血行循環発達程度を評価した。右冠動脈閉塞例の側副血行循環数(0-3)は、平均2.1と左前下行枝閉要塞1.2より有意に大きかった。側副血行循環 発達の程度は、発症から冠動脈造影までの期間、冠動脈病変の重症度によって影響されなかった。以上より、冠側副血行循環は、冠病変の重症度と無関係に1ケ月以内に発達し、梗塞責任冠動脈の灌流域の大きさに影響されるものと考えられた。 3.冠側副血行循環の心室瘤形成に及ぼす影響 心筋梗塞急性期に存在した側副血行循環の左心室瘤形成に及ぼす影響を39例で検討した。冠動脈内血栓溶解療法成功群では、慢性期心室瘤は23例中1例に認められた。血栓溶解療法不成功で、側副血行循環良好群では、心室瘤は7例中1例のみに認められた。不良群では9例中5例にみられ、良好群より高率であった。以上より冠側副血行循環の存在は、梗塞発症後の左心室瘤形成防止に有効であると考えられた。
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