研究概要 |
1.急性心筋硬塞後の冠動脈側副血行循環発達に及ぼすヘパリンの効果硬塞前狭心症を有さない左前下行枝近位部に完全閉塞を認めた初回前壁硬塞患者18例を、硬塞急性期のヘパリン投与の有無により二群に分け、慢性期の冠側副血行循環の程度(Collateral Index,CI:0〜3)と左室機能を評価した。投与群のCIは平均1.5で非投与群の0.4より有意に大きく、硬塞部左室局所短縮率も投与群が非投与群と比較して優位に良好に保たれていた。以上より急性期のヘパリン投与は側副血行循環の発達を促進させ、慢性期左室機能を良好に保つものと考えられた。 2.冠側副血行循環促進によるST低下レベルの改善 主要冠動脈一枝に完全閉塞を認め、その潅流域へ良好な側副血行循環を有する安定労作性狭心症10例を対象として、冠側副血行循環が虚血刺激によって次第に促進されるかを検討した。狭心症を誘発しうる運動負荷量に固定した自転車エルゴメ-タ検査による負荷3分後のST低下レベルは平均0.20mVと終了時の0.16mVより有意に大きかった。ST低下レベルが改善したのは、虚血刺激が側副血行循環を促進し、虚血部局所心筋血流の増大がもたらされたためと結論された。 3.意識犬における冠側副血行循環発達に対する心筋虚血の重要性 頻回冠閉塞における側副血行循環発達を、雑種成犬12頭を1分間閉塞群と2分間閉塞群に分けて比較した。1分目から2分目までの1分間の閉塞は最初の1分間の閉塞より4.43倍有効であること、すなわち、強烈な心筋虚血の存在が側副血行循環発達にとって重要であることが判明した。 4.犬における心筋虚血の冠側副血行循環促進に対する重要性 雑種成犬14頭を用いた様々な冠閉塞プロトコ-ルからなる急性実験で、冠側副血行循環を促進させるには、冠動脈間圧較差だけでは不十分で、心筋虚血による代謝産物の蓄積が大切であると考えられた。
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