研究概要 |
1.冠側副血行循環の臨床的意義 梗塞後狭心症を有する比率は、梗塞前狭心症を有して血栓溶解療法が不成功だった群が梗塞前狭心症を有さず再疎通の得られなかった群に比べて高率だった(67% vs. 13%)。このことは梗塞前狭心症によって発達した側副血行循環により梗塞部の心筋の一部が残存し、血流予備能に限界のある側副血行路で潅流されているためと考えられた。梗塞発症時、梗塞部への側副血行循環を認めなかった症例では高率に(7/12,58%)心室瘤の形成が認められたが、有意な側副血行循環を認めた症例では、10例中わずか1例にのみ心室瘤が形成された。側副血行循環により梗塞部の一部心筋が残存し梗塞拡大を防止した結果と考えられた。安定労作性狭心症を対象として、ヘパリン静注後にトレッドミル運動負荷を20回繰り返したところ、運動耐容能の改善、心筋虚血部への側副血行路の発達が認められた。このような治療法を開発することは、虚血性心疾患患者の予後改善につながるであろう。 2.心筋虚血の冠側副血行循環に及ぼす影響 生来の側副血行循環の促進にとって心筋虚血が重要であることを報告した。側副血行血流は、総冠閉塞時間が同一であるにもかかわらず、5回の1分間閉塞、1回の5分間閉塞の方が、30回の10秒間閉塞より有意に大きかった。1分間の頻回冠閉塞と2分間の頻回冠閉塞で側副血行循環発達を比較したところ、1分目から2分までの1分間の刺激が最初の1分間の刺激より4.43倍有効であることが判明した。心筋虚血の程度は、冠閉塞後次第に増強するので、側副血行循環発達によって強烈な心筋虚血が必須であることが判明した。以上のデ-タより、心筋虚血は、側副血行循環の促進と発達両者に重要であると結論された。
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