研究課題/領域番号 |
63570393
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
楠岡 英雄 大阪大学, 医学部, 助手 (00112011)
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研究分担者 |
佐藤 洋 大阪大学, 医学部附属病院, 医員
堀 正二 大阪大学, 医学部, 助手 (20124779)
井上 通敏 大阪大学, 医学部附属病院, 教授 (30028401)
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キーワード | 虚血 / 再灌流障害 / 摘出灌流心 / 細胞内カルシウム濃度 / フッ素核磁気共鳴法 / 5FーBAPTA / カルシウム・オ-バ-ロ-ド |
研究概要 |
心筋は、短時間の虚血後、再灌流すると、細胞壊死は生じないにもかかわらず、収縮機能の低下を生じ、機能回復には長時間を要することが知られている。この病態はstunned myocardiumと呼ばれ、近年、急性心筋梗塞症における早期血流再建が可能となるにつれ、臨床的に重要な問題となている。しかし、stunned myocardiumにおける心収縮性低下の機序は、いまだに解明されていない。本研究では、stunned myocardiumにおける収縮性低下の機序を、興奮収縮連関の立場から検討した。 心筋の収縮性は、興奮収縮連関の構成要素、すなわち、Ca transient、収縮蛋白のCa^<2+>感受生、最大のCa^<2+>活性化張力の3要因により規定される。摘出灌流心における細胞内Ca^<2+>濃度([Ca^<2+>]_i)は、細胞内に負荷した弗素化合物5FーBAPTAのCa^<2+>との結合型・非結合型の信号を弗素核磁気共鳴法(FーNMR)により観測し、求めた。この方法を心周期と同期させることにより、摘出灌流心においてCa transientの測定を行った。37°C、15分間の虚血後、再灌流を行ったferret灌流心をstunned myocardiumのモデルとした。その結果、拡張期末の[Ca^<2+>]_iは虚血前後において有意な変化はなかったが、収縮期の[Ca^<2+>]_iのピ-ク値は再灌流後、有意に増大していた。さらに、Ca transientの振幅と発生圧との関係(収縮蛋白のCa^<2+>反応性)を検討したところ、その傾きには、stunned myocardiumにおいて有意な低下が認められた。さらに、これを最大Ca^<2+>活性化張力の指標で正規化し、収縮蛋白のCa^<2+>感受性の指標を求めたところ、stunned myocardiumでは有意な低下が認められた。以上の結果より、stunned myocardiumでは、Ca transientのparadoxicalな増大が存在すると同時に、収縮蛋白の最大Ca^<2+>活性化張力、Ca^<2+>感受性が著明に低下し、その結果、収縮性の低下がもたらされていることが明らかとなった。
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